ショパン音楽教室 編集部 末次弘季
第19回ショパン国際ピアノコンクール第3次予選が、10月14日ワルシャワ・フィルハーモニーで幕を開けた。
ソナタとマズルカという最も本質的な課題曲を前に、20名のセミファイナリストたちがそれぞれの音楽観と個性を響かせた一日。初日から印象的な演奏が相次ぎ、なかでもティエンヨウ・リー(中国)が圧巻の構成力と深い音楽性で聴衆を魅了。エリック・グオ(カナダ)、ダヴィト・フリウクリ(ジョージア)、そして桑原志織(日本)らが高い完成度で続き、
今大会のレベルの高さと多彩な個性を印象づける幕開けとなった。
🕔 ヤン・ジャック・ガオ(21)中国🇨🇳
🎹 使用ピアノ:Shigeru Kawai
● Yang (Jack) GAO プロフィール
- 生年月日:2003年12月18日生まれ
- 師事歴:Tianhong Tan、Xin Xie、Jerome Lowenthal、Emanuel Ax(現在)
- 所属:The Juilliard School(アメリカ)/China Conservatory of Music附属高等学校(中国)
- 受賞歴:2019年スタインウェイピアノコンクール第2位、2023年ナウムブルク国際ピアノコンクール第1位、ジュリアード校ジーナ・バッカウアー・ピアノコンクール第1位、ベーゼンドルファー&ヤマハUSASU国際コンクール第2位、2025年シュタインウェイ賞受賞
- 過去受けたマスタークラス等で受けた師事した教授陣:Martha Argerich
- その他:2024年カーネギーホールで自身の最新作を初演。2025年マルタ・アルゲリッチ音楽祭(ハンブルク)に招待され演奏。
● Yang (Jack) GAO 1次予選 プログラム
- 練習曲 ホ長調 Op.10-3「別れの曲」
- 練習曲 嬰ト短調 Op.25-6
- バラード第3番 変イ長調 Op.47
- 華麗なる円舞曲 変イ長調 Op.34-1
● Yang (Jack) GAO 2次予選 プログラム
- ポロネーズ第6番 変イ長調 Op.53「英雄」
- 24の前奏曲 Op.28 全曲
● Yang (Jack) GAO 3次予選 プログラム
- 子守歌 変ニ長調 Op.57
- 即興曲第3番 変ト長調 Op.51
- 4つのマズルカ Op.33
- ピアノ・ソナタ第3番 ロ短調 Op.58
● Yang (Jack) GAO ファイナル プログラム
- 幻想ポロネーズ 変イ長調 Op.61
- ピアノ協奏曲 第1番 ホ短調 Op.11
筆者レポート
静けさと構築性のバランスが印象的だった朝の幕開け。子守歌 Op.57 は、柔らかな光の中でそっと揺らぐように始まり、即興曲 Op.51 では音色のコントラストを鮮やかに描いた。マズルカ Op.33 では伝統的なリズムを自然に呼吸させ、特に第3番の煌びやかな粒立ちは見事。
ソナタ第3番ロ短調では構成の明確さが際立ち、音の「光と影」を明快に描いた。朝一番という条件を感じさせない集中力で、誠実なショパン像を提示した。
ファイナル進出予想:★★★
🕔 エリック・グオ(23)カナダ🇨🇦
🎹 使用ピアノ:スタインウェイ
● Eric Guo プロフィール
- 生年月日:2002年8月1日生まれ
- 師事歴:Jonathan Biss(現在)、Anton Nel(現在)
- 所属:The Glenn Gould School of the Royal Conservatory of Music(カナダ)
- 受賞歴:第2回ショパン国際ピリオド楽器コンクール(ワルシャワ)第1位およびマズルカ賞受賞
- 過去受けたマスタークラス等で受けた師事した教授陣:なし(情報なし)
- その他:デビューアルバムは2023年にショパン研究所より発売。『ショパンと彼のヨーロッパ』『ドヴォルザーク・プラハ』『ボルツァーノ・ボーツェン』『フロスト・ショパン』など多数の音楽祭に出演。ヨーロッパ、日本、アメリカ、カナダ各地で演奏。ミネソタ、フォートワース、{oh!}オーケストラ、Collegium 1704、ロイヤル・フィルハーモニー管弦楽団、バッハ・コレギウム・ジャパンなどと共演。
● Eric Guo 1次予選 プログラム
- ノクターン ロ長調 Op.62-1
- 練習曲 イ短調 Op.10-2
- ワルツ 変イ長調 Op.42
- バラード ヘ短調 Op.52
● Eric Guo 2次予選 プログラム
- 前奏曲 変ホ長調 Op.28-19
- 前奏曲 ハ短調 Op.28-20
- 前奏曲 変ロ長調 Op.28-21
- 前奏曲 ト短調 Op.28-22
- 前奏曲 ヘ長調 Op.28-23
- 前奏曲 ニ短調 Op.28-24
- ポロネーズ 嬰ヘ短調 Op.44
- 練習曲 変ホ短調 Op.10-6
- マズルカ 変ロ長調 Op.17-1
- マズルカ ホ短調 Op.17-2
- マズルカ 変イ長調 Op.17-3
- マズルカ イ短調 Op.17-4
- 前奏曲 嬰ハ短調 Op.45
- 舟歌 嬰ヘ長調 Op.60
● Eric Guo 3次予選 プログラム
- バラード 変イ長調 Op.47
- マズルカ イ短調 Op.59-1
- マズルカ 変イ長調 Op.59-2
- マズルカ 嬰ヘ短調 Op.59-3
- スケルツォ 変ロ短調 Op.31
- 即興曲 変ト長調 Op.51
- ピアノ・ソナタ第2番 変ロ短調 Op.35
● Eric Guo ファイナル プログラム
- 幻想ポロネーズ 変イ長調 Op.61
- ピアノ協奏曲 第1番 ホ短調 Op.11
レポート
ファイナル進出予想:★★★★
第2回ショパン古楽器コンクールの覇者としての成熟が際立った。バラード第3番では「水辺を渡るような音の流れ」と評されるほど滑らかで、マズルカ Op.59 では詩的な抒情性と幻想性を兼ね備えた。特に第2番の透明感ある音の広がりは、今年の「マズルカ賞候補」ほどの完成度。
スケルツォ第2番の中間部は繊細な和声感を保ち、ソナタ第2番では不安と静寂、闇と希望が交錯する壮大な構築を聴かせた。音のひとつひとつが詩のように語りかける演奏で、第3次予選のハイライトのひとつとなった。
🕔 デイヴィッド・フリクリ(24)ジョージア🇬🇪
🎹 使用ピアノ:スタインウェイ
● David Khrikuli プロフィール
- 生年月日:2001年4月26日生まれ
- 師事歴:Stanislav Ioudenich(現在)
- 所属:Queen Sofia School of Music(スペイン)
- 受賞歴:2024年カントゥ国際ピアノオーケストラコンクール(イタリア)第1位、2024年ビーゴ国際ピアノコンクール(スペイン)第1位および聴衆賞受賞。その他、ジョージア、ロシア、オランダ、デンマーク、中国の国際コンクールで受賞。
- 過去受けたマスタークラス等で受けた師事した教授陣:Elisabeth Leonskaja、Rena Shereshevskaya、Nelson Goerner(今大会の審査員)
- その他:ジョージア・フィルハーモニー管弦楽団、イスラエル・カメラータ、モスクワ・フィルハーモニーなどと共演し、ソロおよび室内楽でも活躍。
● David Khrikuli 1次予選 プログラム
- ノクターン ハ短調 Op.48-1
- 練習曲 ハ長調 Op.10-1
- ワルツ 変イ長調 Op.34-1
- 幻想曲 ヘ短調 Op.49
● David Khrikuli 2次予選 プログラム
- ポロネーズ 嬰ヘ短調 Op.44
- 24の前奏曲 Op.28(第1番〜第24番)
- スケルツォ 嬰ハ短調 Op.39
● David Khrikuli 3次予選 プログラム
- マズルカ ロ長調 Op.56-1
- マズルカ ハ長調 Op.56-2
- マズルカ ハ短調 Op.56-3
- ピアノ・ソナタ第2番 変ロ短調 Op.35
- 即興曲 変ト長調 Op.51
- ワルツ 変イ長調 Op.42
- ワルツ イ短調 Op.34-2
- スケルツォ ホ長調 Op.54
● David Khrikuli ファイナル プログラム
- 幻想ポロネーズ 変イ長調 Op.61
- ピアノ協奏曲 第2番 ヘ短調 Op.21
レポート
ファイナル進出予想:★★★★
ジョージアの新星がこの日、会場を最も沸かせた。マズルカ Op.56 は曖昧な調性感の中に詩的な流れをつくり、自然な呼吸で音楽を紡いだ。ソナタ第2番では葬送行進曲の中間部でほとばしる情感を見せ、ワルツ Op.42・Op.34-2 は即興的で浮遊感のあるリズムが美しく、最後のスケルツォ第4番では生きたショパンの息づかいが感じられた。
Polskie Radio Dwójka のマイフロフスキ氏は「こんな演奏は数回に一度しか起こらない」と評し、スウェク氏も「生きたショパンの本質を見せた」と感嘆。
■ 10月14日(火) 夜の部
🕔 桑原 志織(29)日本🇯🇵
🎹 使用ピアノ:スタインウェイ
● Shiori Kuwahara プロフィール
- 生年月日:1995年10月11日生まれ
- 師事歴:Klaus Hellwig(過去、ベルリン芸術大学修士課程修了時まで)
- 所属:東京藝術大学(日本)、ベルリン芸術大学(ドイツ)
- 受賞歴:2022年ベルリン・スタインウェイ賞受賞。マリア・カナルス国際ピアノコンクール(2016/スペイン)第2位、ジャン・バッティスタ・ヴィオッティ国際コンクール(2017/イタリア)第2位、フェルッチョ・ブゾーニ国際ピアノコンクール(2019/イタリア)第2位、アルトゥール・ルービンシュタイン国際ピアノコンクール(2021/イスラエル)第2位、2025年エリザベート王妃国際音楽コンクール(ベルギー)入賞。
- 過去受けたマスタークラス等で受けた師事した教授陣:なし(情報なし)
- その他:ポーランド(ドゥシニキ=ズドロイ・ショパン祭)、チェコ(プラハ・ルドルフィヌム〈ドヴォルザーク・ホール〉)、オーストリア、ドイツ、イスラエル、セルビア、イタリア、日本、韓国、アメリカなどで演奏。
● Shiori Kuwahara 1次予選 プログラム
- 練習曲 イ短調 Op.25-11
- ノクターン ロ長調 Op.9-3
- ワルツ 変イ長調 Op.34-1
- バラード ヘ短調 Op.52
● Shiori Kuwahara 2次予選 プログラム
- 前奏曲 嬰ヘ長調 Op.28-13
- 前奏曲 変ホ短調 Op.28-14
- 前奏曲 変ニ長調 Op.28-15
- 前奏曲 変ロ短調 Op.28-16
- 前奏曲 変イ長調 Op.28-17
- 前奏曲 ヘ短調 Op.28-18
- ポロネーズ 変イ長調 Op.53
- 舟歌 嬰ヘ長調 Op.60
- 幻想曲 ヘ短調 Op.49
● Shiori Kuwahara 3次予選 プログラム
- スケルツォ 嬰ハ短調 Op.39
- マズルカ 嬰ト短調 Op.33-1
- マズルカ ハ長調 Op.33-2
- マズルカ ニ長調 Op.33-3
- マズルカ ロ短調 Op.33-4
- ピアノ・ソナタ第3番 ロ短調 Op.58
● Shiori Kuwahara ファイナル プログラム
- 幻想ポロネーズ 変イ長調 Op.61
- ピアノ協奏曲 第1番 ホ短調 Op.11
レポート
ファイナル進出予想:★★★★
日没後のホールに響いたのは、透明な力強さとロマン的な情熱。スケルツォ第3番は緊張感と壮麗さを兼ね備え、マズルカ Op.33 では繊細な感情表現が随所に光った。
一部の評論家は「力強すぎる」とも評したが、そこには作品を内側から燃やすような情念がある。ソナタ第3番ロ短調は完璧な構成のもと、ラルゴでは深い沈黙の中に光を灯すような演奏で聴衆を魅了した。
🕔 ヒョ・リー(18)韓国🇰🇷
🎹 使用ピアノ:シゲルカワイ
● Hyo Lee プロフィール
- 生年月日:2007年1月5日生まれ
- 師事歴:Ewa Pobłocka(現在、今大会の審査員)
- 所属:École Normale de Musique de Paris(フランス)
- 受賞歴:アスタナ・ピアノ・パッション国際コンクール(カザフスタン)入賞、ミュージカル・ダイアモンド・コンクール(モスクワ)グランプリ、第3位 アルトゥール・ルービンシュタイン・イン・メモリアム国際ピアノコンクール(ビドゴシュチュ)、アニマート国際ピアノコンクール(フランス)、マルグリット・ロン=ジャック・ティボー国際コンクール(2025/パリ)。
- 過去受けたマスタークラス等で受けた師事した教授陣:なし(情報なし)
- その他:ワルシャワおよびクラクフ・フィルハーモニーなど主要ホールで演奏。兄ヒョク・リーとのデュオでも活動し、ベートーヴェン、ガーシュウィン、サン=サーンスの作品を演奏。
● Hyo Lee 1次予選 プログラム
- ノクターン 嬰ハ短調 Op.27-1
- バラード ヘ長調 Op.38
- ワルツ 変ホ長調 Op.18
- 練習曲 ロ短調 Op.25-10
● Hyo Lee 2次予選 プログラム
- 前奏曲 変ホ長調 Op.28-19
- 前奏曲 ハ短調 Op.28-20
- 前奏曲 変ロ長調 Op.28-21
- 前奏曲 ト短調 Op.28-22
- 前奏曲 ヘ長調 Op.28-23
- 前奏曲 ニ短調 Op.28-24
- ポロネーズ 変イ長調 Op.53
- ピアノ・ソナタ第1番 ハ短調 Op.4
● Hyo Lee 3次予選 プログラム
- バラード ト短調 Op.23
- マズルカ イ短調 Op.59-1
- マズルカ 変イ長調 Op.59-2
- マズルカ 嬰ヘ短調 Op.59-3
- ピアノ・ソナタ第2番 変ロ短調 Op.35
- スケルツォ 嬰ハ短調 Op.39
● Hyo Lee ファイナル プログラム
- 幻想ポロネーズ 変イ長調 Op.61
- ピアノ協奏曲 第2番 ヘ短調 Op.21
レポート
ファイナル進出予想:★★★
舞台に登場した瞬間から明るい笑顔と自然な佇まいで会場を和ませた。バラード第1番では若さゆえの勢いが感じられ、ソナタ第2番では個人的な語り口が印象的。
評論家たちは「構成の明確さ」「若きエネルギー」とともに、今後の深化への期待を口を揃えて語った。
🕔 ヒョク・リー(25)韓国🇰🇷
🎹 使用ピアノ:スタインウェイ
● Hyuk Lee プロフィール
- 生年月日:2000年1月4日生まれ
- 師事歴:Vladimir Ovchinnikov(過去)、École Normale de Musique de Parisにて学ぶ
- 所属:Moscow Conservatory(ロシア)、École Normale de Musique de Paris(フランス)
- 受賞歴:イグナツィ・ヤン・パデレフスキ国際ピアノコンクール(ビドゴシュチュ/2016)第1位、マルグリット・ロン=ジャック・ティボー国際コンクール(パリ/2022)第1位、浜松国際ピアノコンクール(2018)第3位、第18回ショパン国際ピアノコンクール(ワルシャワ/2021)ファイナリスト。
- 過去受けたマスタークラス等で受けた師事した教授陣:なし(情報なし)
- その他:パリのシャンゼリゼ劇場、シャトレ劇場、ポーランド国立オペラ、プラハ・ルドルフィヌム、ブエノスアイレス・テアトロ・コロンなど著名ホールで演奏。ピアノのほか、ヴァイオリンやチェスにも親しむ。
● Hyuk Lee 1次予選 プログラム
- 幻想曲 ヘ短調 Op.49
- ノクターン ロ長調 Op.62-1
- ワルツ 変イ長調 Op.34-1
- 練習曲 イ短調 Op.25-11
● Hyuk Lee 2次予選 プログラム
- 前奏曲 イ長調 Op.28-7
- 前奏曲 嬰ヘ短調 Op.28-8
- 前奏曲 ホ長調 Op.28-9
- 前奏曲 嬰ハ短調 Op.28-10
- 前奏曲 ロ長調 Op.28-11
- 前奏曲 嬰ト短調 Op.28-12
- ポロネーズ 嬰ヘ短調 Op.44
- ピアノ・ソナタ第2番 変ロ短調 Op.35
- スケルツォ 変ロ短調 Op.31
● Hyuk Lee 3次予選 プログラム
- 即興曲 嬰ヘ長調 Op.36
- バラード 変イ長調 Op.47
- マズルカ ホ短調 Op.41-1
- マズルカ ロ長調 Op.41-2
- マズルカ 変イ長調 Op.41-3
- マズルカ 嬰ハ短調 Op.41-4
- ピアノ・ソナタ第3番 ロ短調 Op.58
● Hyuk Lee ファイナル プログラム
- 幻想ポロネーズ 変イ長調 Op.61
- ピアノ協奏曲 第1番 ホ短調 Op.11
レポート
ファイナル進出予想:★★★
2度目のショパンコンクール挑戦となる彼は、即興曲 Op.36 からバラード、マズルカ Op.41、ソナタ第3番まで、流麗な流れで一貫した世界を築いた。即興曲では左手の構築と右手の霞のような響きの対比が印象的。
マズルカでは即興的な伸びやかさを見せ、ソナタ第3番では明るい音色で作品の光の側面を描き出した。
評論家スウェク氏は「左手の声部に重心を置き、右手が霧のように溶ける」と絶賛。
🕔 ティエンヨウ・リー(21)中国🇨🇳
🎹 使用ピアノ:スタインウェイ
● Tianyou Li プロフィール
- 生年月日:2004年4月5日生まれ
- 師事歴:Xiaohan Wang(現在)
- 所属:Tianjin Conservatory of Music(中国)
- 受賞歴:シンガポール国際ピアノコンクール 第1位&バッハ賞、珠海モーツァルト国際コンクール 第1位、スタインウェイ&サンズ・コンクール 第2位、ショパン北京国際青少年コンクール 第3位
- 過去受けたマスタークラス等で受けた師事した教授陣:(情報なし)
- その他:ウィーン・ハイドンザール、北京国家大劇院、天津ジュリアード・コンサートホール、天津大劇院、ベルリン・カンマームジークザール等に出演。中国主要オーケストラやドイツ交響楽団ベルリンと共演。
● Tianyou Li 1次予選 プログラム
- ノクターン ホ長調 Op.62-2
- 練習曲 イ短調 Op.25-11
- ワルツ 変イ長調 Op.42
- 幻想曲 ヘ短調 Op.49
● Tianyou Li 2次予選 プログラム
- 前奏曲 嬰ヘ長調 Op.28-13
- 前奏曲 変ホ短調 Op.28-14
- 前奏曲 変ニ長調 Op.28-15
- 前奏曲 変ロ短調 Op.28-16
- 前奏曲 変イ長調 Op.28-17
- 前奏曲 ヘ短調 Op.28-18
- ポロネーズ 変イ長調 Op.53
- ピアノ・ソナタ第1番 ハ短調 Op.4
● Tianyou Li 3次予選 プログラム
- マズルカ イ短調 Op.59-1
- マズルカ 変イ長調 Op.59-2
- マズルカ 嬰ヘ短調 Op.59-3
- ピアノ・ソナタ第2番 変ロ短調 Op.35
- モーツァルト《ドン・ジョヴァンニ》の「ラ・チ・ダレム・ラ・マーノ」による変奏曲 変ロ長調 Op.2
● Tianyou Li ファイナル プログラム
- 幻想ポロネーズ 変イ長調 Op.61
- ピアノ協奏曲 第1番 ホ短調 Op.11
レポート
この日の掉尾を飾ったのは、中国のティエンヨウ・リー。マズルカ Op.59 は軽やかで滑らか、自然な呼吸の中にポーランド的リズムの余韻を漂わせた。ソナタ第2番では壮大な構築と明確な対比をもって劇的な世界を築き、ブルース・リウ(2021年優勝)を思わせるプログラム構成で聴衆を引き込んだ。終盤の「モーツァルト《ドン・ジョヴァンニ》による変奏曲」では、音の粒が踊るように生き生きと、軽妙なユーモアと自由が溢れた。
評論家は「第2次予選とはまるで別人のよう」「依然として謎めいて、だが鮮烈」と評す。
総括
第3次予選の幕開けとなった10月14日は、アジア勢の成熟と多様性が際立った一日だった。
- 詩的で構成的な ヤン・ガオ(中国)
- 音の叙情詩人 エリック・グオ(カナダ)
- 生きたショパンを体現した ダヴィト・フリウクリ(ジョージア)
- 精緻な表現の 桑原志織(日本)
- 若き情熱の ヒョ兄弟(韓国)
- そして全体を締めくくった ティエンヨウ・リー(中国) の圧巻のパフォーマンス。
それぞれが個性を超えて、ショパンの本質に迫る一歩を示した。評論家たちも「かつてないほど個性豊かな第3次予選」と口を揃えている。ファイナル最有力候補は Tianyou Li 🇨🇳、有力候補: Eric Guo 🇨🇦、David Khrikuli 🇬🇪、次点で桑原詩織🇯🇵と予想する声が大きい。
音が語り、静寂が響く――
ショパンの魂がもっとも近くに感じられる一日だった。