ワルシャワ・フィルハーモニーホールに朝の光が差し込む頃、いよいよ第3次予選最終日が幕を開けた。
3日間にわたる熱演の締めくくりにふさわしく、この日はそれぞれの個性が鮮明に浮かび上がる一日となった。技巧の極みを見せるピアニスト、詩的世界を織りなす音の語り手、そして静謐さと情熱の狭間で音を紡ぐアーティストたち──多彩な音楽がホールを満たした。
ホールで全て鑑賞予定です。
思い出として、鑑賞して感じたことを書きたいと思います。
第19回ショパン国際ピアノコンクール第3次予選が、10月14日ワルシャワ・フィルハーモニーで幕を開けた。ソナタとマズルカという最も本質的な課題曲を前に、20名のセミファイナリストたちがそれぞれの音楽観と個性を響かせた一日。初日から印象的な演[…]
第19回ショパン国際ピアノコンクール第3次予選2日目となった10月15日、朝のワルシャワ・フィルハーモニーには、再びショパンの音楽が息づいた。前日とは異なり、この日は東アジア勢とポーランド勢が中心。繊細な抒情、若い感性、そして構築的な知性が[…]
■ 10月16日(木) 朝の部
🕔 牛田 智大(25)日本🇯🇵
🎹 使用ピアノ:スタインウェイ
● Tomoharu Ushida プロフィール
- 生年月日:1999年10月16日生まれ
- 師事歴:Piotr Paleczny(今大会の審査員)(現在)、下田幸二(現在)、Mikhail Pletnev(過去)
- 所属:ショパン音楽大学(ポーランド)、東京(日本)
- 受賞歴:浜松国際ピアノアカデミーコンクール第1位(2012)、浜松国際ピアノコンクール第2位(2018)、リーズ国際ピアノコンクール聴衆賞(2024)
- 過去受けたマスタークラス等で受けた師事した教授陣:Mikhail Pletnev
- その他:NHK交響楽団、東京交響楽団、ウィーン室内管弦楽団、ワルシャワ・フィルハーモニー管弦楽団と共演。ユニバーサルミュージック専属アーティスト。
● Tomoharu Ushida 1次予選 プログラム
- 夜想曲 ロ長調 Op.62-1
- 練習曲 ハ長調 Op.10-1
- ワルツ 変イ長調 Op.42
- 舟歌 嬰ヘ長調 Op.60
● Tomoharu Ushida 2次予選 プログラム
- ロンド・ア・ラ・マズール ヘ長調 Op.5
- ピアノソナタ第2番 変ロ短調 Op.35
- 前奏曲 変ホ長調 Op.28-19
- 前奏曲 ハ短調 Op.28-20
- 前奏曲 変ロ長調 Op.28-21
- 前奏曲 ト短調 Op.28-22
- 前奏曲 ヘ長調 Op.28-23
- 前奏曲 ニ短調 Op.28-24
- ポロネーズ 変イ長調 Op.53
● Tomoharu Ushida 3次予選 プログラム
- 前奏曲 嬰ハ短調 Op.45
- マズルカ ロ長調 Op.56-1
- マズルカ ハ長調 Op.56-2
- マズルカ ハ短調 Op.56-3
- 幻想曲 ヘ短調 Op.49
- ピアノソナタ第3番 ロ短調 Op.58
● Tomoharu Ushida ファイナル プログラム
- 幻想ポロネーズ 変イ長調 Op.61
- ピアノ協奏曲 第1番 ホ短調 Op.11
Tomoharu Ushida(日本)演奏レポート
ファイナル進出予想: ★★★★
朝一番に登場した牛田智大さんは、研ぎ澄まされた音の粒を自在に操りながら、全体を清潔感のある響きでまとめた。プレリュードでは柔らかな導入から幻想曲へと自然に流れ込み、マズルカではリズムの呼吸が生きていた。やや強めの音量も、その明快な構築性の中では一つのスタイルとして機能していた。彼の音楽は派手さではなく誠実さで聴き手を引き込む。
🕔 ズートン・ワン(26)中国🇨🇳+
🎹 使用ピアノ:シゲル・カワイ
● Zitong Wang プロフィール
- 生年月日:1999年2月3日生まれ
- 師事歴:Dang Thai Son(ニューイングランド音楽院)
- 所属:ニューイングランド音楽院(アメリカ)
- 受賞歴:Rosalyn Tureck Bach(ニューヨーク)第1位(2010)、プリンストン国際ピアノコンクール第1位(2020)、フェロール国際ピアノコンクール(スペイン)第1位(2022)、ブゾーニ国際コンクール第6位(2023)
- 過去受けたマスタークラス等で受けた師事した教授陣:
- その他:13歳で北京・紫禁城コンサートホールでソロ・デビュー。フィラデルフィア管、クリーヴランド管、ニュージャージー響、ガリシア響等と共演。出演会場:ヴェライゾン・ホール(ペンシルベニア)、セヴェランス・ホール(クリーヴランド)、スタインウェイ・ホール(ニューヨーク)ほか。室内楽で孟捷(Meng-Chieh Liu)、Roberto Díaz、Chamber Music Northwest と共演。
● Zitong Wang 1次予選 プログラム
- 夜想曲 嬰ヘ短調 Op.48-2
- 練習曲 嬰ト短調 Op.25-6
- ワルツ 変イ長調 Op.42
- 幻想曲 ヘ短調 Op.49
● Zitong Wang 2次予選 プログラム
- 夜想曲 ヘ長調 Op.15-1
- エコセーズ ニ長調[Op.72-1](WN 13-3)
- エコセーズ ト長調[Op.72-2](WN 13-1)
- エコセーズ 変ニ長調[Op.72-3](WN 13-2)
- アンダンテ・スピアナートと華麗なる大ポロネーズ 変ホ長調 Op.22
- バラード第3番 変イ長調 Op.47
- プレスト・コン・レッジェレッツァ 変イ長調(WN 44)
- 前奏曲 変ホ長調 Op.28-19
- 前奏曲 ハ短調 Op.28-20
- 前奏曲 変ロ長調 Op.28-21
- 前奏曲 ト短調 Op.28-22
- 前奏曲 ヘ長調 Op.28-23
- 前奏曲 ニ短調 Op.28-24
- マズルカ ヘ短調[Op.68-4](WN 65)
● Zitong Wang 3次予選 プログラム
- マズルカ ト長調 Op.50-1
- マズルカ 変イ長調 Op.50-2
- マズルカ 嬰ハ短調 Op.50-3
- ピアノソナタ第2番 変ロ短調 Op.35
- 歌劇『ルドヴィク』の主題による変奏曲 変ロ長調 Op.12(エロルド/アレヴィ「Je vends des scapulaires」)
- ワルツ ホ長調(WN 18)
- スケルツォ第1番 ロ短調 Op.20
● Zitong Wang ファイナル プログラム
- 幻想ポロネーズ 変イ長調 Op.61
- ピアノ協奏曲 第1番 ホ短調 Op.11
Zitong Wang(中国)演奏レポート
ファイナル進出予想: ★★★★★
この日最も聴衆の心をつかんだのがZitong Wangだった。マズルカOp.50の選曲は見事で、マズル・オベレク・クヤヴィアクの要素が軽やかに交錯し、民族舞曲の多彩な表情を鮮やかに描き出す。続く《ソナタ第2番》では、鋭いリズム感と構築的な展開が一体となり、そしてフィナーレの《スケルツォ ロ短調 Op.20》では、まさに情熱の嵐。そのリズムの確かさと歌心の両立は、この日のステージでも際立っていた。フィルハーモニアの空間全体を支配するようなエネルギーと透明感が共存し、聴き手の心を一瞬にして奪った。
彼女は私にとっても“どタイプ”のピアニストであり、第1次予選からずっと推している存在だ。
🕔 イーファン・ウー(16)中国🇨🇳
🎹 使用ピアノ:スタインウェイ
● Yifan Wu プロフィール
- 生年月日:2008年11月11日生まれ
- 師事歴:Ting Zhou(上海音楽学院附属中学)
- 所属:上海音楽学院附属中学(中国)
- 受賞歴:ラフマニノフ国際ユースピアノコンクール第1位、グスタフ・マーラー賞ピアノコンクール第1位(2024)、クライバーン国際ジュニアピアノコンクール第2位(2023)、BraVo国際音楽賞受賞(2024)、ブゾーニ国際コンクールファイナリスト(2024)
- 過去受けたマスタークラス等で受けた師事した教授陣:
- その他:2019年に上海・スタインウェイホールでリサイタル・デビュー、同年に武漢フィルハーモニー管弦楽団とコンチェルト・デビュー。これまでにダラス交響楽団、サンクトペテルブルク・フィルハーモニー、モスクワ国立アカデミー交響楽団と共演。2024–2026年にラン・ラン国際音楽財団奨学生。
● Yifan Wu 1次予選 プログラム
- 練習曲 嬰ト短調 Op.25-6
- 夜想曲 ハ短調 Op.48-1
- ワルツ 変イ長調 Op.42
- 舟歌 嬰ヘ長調 Op.60
● Yifan Wu 2次予選 プログラム
- 前奏曲 嬰ヘ長調 Op.28-13
- 前奏曲 変ホ短調 Op.28-14
- 前奏曲 変ニ長調 Op.28-15
- 前奏曲 変ロ短調 Op.28-16
- 前奏曲 変イ長調 Op.28-17
- 前奏曲 ヘ短調 Op.28-18
- 幻想曲 ヘ短調 Op.49
- アンダンテ・スピアナートと華麗なる大ポロネーズ 変ホ長調 Op.22
● Yifan Wu 3次予選 プログラム
- 子守歌 変ニ長調 Op.57
- バラード第2番 ヘ長調 Op.38
- マズルカ ロ長調 Op.56-1
- マズルカ ハ長調 Op.56-2
- マズルカ ハ短調 Op.56-3
- ピアノソナタ第3番 ロ短調 Op.58
● Yifan Wu ファイナル プログラム
- 幻想ポロネーズ 変イ長調 Op.61
- ピアノ協奏曲 第1番 ホ短調 Op.11
Yifan Wu(中国)演奏レポート
ファイナル進出予想: ★★★
ざわざわな中で始まったリーの演奏は、《マズルカ Op.33》から。彼の音は、まるで薄明の霧の中で響くクヤヴィアクの調べのように自然で、穏やかに呼吸していた。ポーランドの評論家クラウディア・バラノフスカも「リリシズムと色彩の豊かさ」と評したように、フレーズの端々に音楽的な詩情が漂う。続く《ソナタ変ロ短調 Op.35》では若干の緊張が感じられたものの、全体としては構成感が明快で、誠実な演奏態度が印象的だった。
■ 10月16日(木) 夜の部
🕔 ウィリアム・ヤン(24)アメリカ🇺🇸
🎹 使用ピアノ:スタインウェイ
● William Yang プロフィール
- 生年月日:2001年5月13日生まれ
- 師事歴:Robert McDonald(ジュリアード音楽院)(現在)、Alexander Korsantia、Paul Wirth(過去)
- 所属:ジュリアード音楽院(アメリカ)、カーティス音楽院(アメリカ)
- 受賞歴:マイアミ・ナショナル・ショパン・コンクール第1位(2025、マズルカ賞およびソナタ賞受賞)、ミッドウエスト国際ピアノコンクール第2位(2014)、クリーヴランド国際ピアノコンクールセミファイナリスト・バッハ賞(2015)
- 過去受けたマスタークラス等で受けた師事した教授陣:
- その他:フォートワース交響楽団、サウスイースト・アイオワ交響楽団、ミネソタ管弦楽団と共演。スタインウェイ・レコーディング・プロジェクト受賞者。カーネギーホール・ワイル・リサイタルホールを含むリサイタルツアーに参加。
● William Yang 1次予選 プログラム
- バラード第2番 ヘ長調 Op.38
- 夜想曲 ロ長調 Op.62-1
- ワルツ 変イ長調 Op.42
- 練習曲 ロ短調 Op.25-10
● William Yang 2次予選 プログラム
- 舟歌 嬰ヘ長調 Op.60
- 夜想曲 ロ長調 Op.32-1
- 夜想曲 変イ長調 Op.32-2
- アンダンテ・スピアナートと華麗なる大ポロネーズ 変ホ長調 Op.22
- 前奏曲 変ホ長調 Op.28-19
- 前奏曲 ハ短調 Op.28-20
- 前奏曲 変ロ長調 Op.28-21
- 前奏曲 ト短調 Op.28-22
- 前奏曲 ヘ長調 Op.28-23
- 前奏曲 ニ短調 Op.28-24
● William Yang 3次予選 プログラム
- スケルツォ第4番 ホ長調 Op.54
- マズルカ 嬰ト短調 Op.33-1
- マズルカ ハ長調 Op.33-2
- マズルカ ニ長調 Op.33-3
- マズルカ ロ短調 Op.33-4
- ピアノソナタ第3番 ロ短調 Op.58
● William Yang ファイナル プログラム
- 幻想ポロネーズ 変イ長調 Op.61
- ピアノ協奏曲 第2番 ヘ短調 Op.21
William Yang(アメリカ)演奏レポート
ファイナル進出予想: ★★★
夕方のセッションでは、ウィリアム・ヤンが独自の音楽観を示した。スケルツォ第4番では白鍵の扱いに独特のニュアンスを加え、繊細な陰影を生む。マズルカOp.33では、どこか夢の中を歩くような柔らかな時間の流れが印象的だった。ステファンスキ氏の評にもある通り、彼の音楽は「静寂の緊張」を湛え、極端に遅いテンポでも張りつめた集中を失わない。ソナタでは深く沈み込むような内省の美が漂い、聴衆の耳を静かに惹きつけた。派手な効果に頼らず、音の質感で勝負する稀有なピアニストである。
🕔 ピオトル・アレクシェヴィチ(25)ポーランド🇵🇱
🎹 使用ピアノ:シゲル・カワイ
● Piotr Alexewicz プロフィール
- 生年月日:2000年4月9日生まれ
- 師事歴:Paweł Zawadzki(ヴロツワフ)、Konstantin Scherbakov(チューリッヒ)、Nikolai Demidenko(過去)
- 所属:ヴロツワフ音楽院(ポーランド)、チューリッヒ音楽大学(スイス)
- 受賞歴:ヒルトン・ヘッド国際ピアノコンクール第2位(2025)、ポーランド国内ショパンコンクール2度優勝、ショパン国際コンクール第18回大会でズビグニェフ・ジェヴェツキ賞受賞、テキサス・ピアノ協奏曲コンクール優勝(2024)、スイス・シェンク・コンクール優勝(全特別賞受賞)
- 過去受けたマスタークラス等で受けた師事した教授陣:Nikolai Demidenko
- その他:ベルリン・フィルハーモニー、サル・コルトー(パリ)、サンパウロ・ホール、NFMヴロツワフ、ワルシャワ・フィル、シンフォニーホール大阪などで演奏。共演指揮者:Howard Shelley、Carlos Miguel Prieto、Andrzej Boreyko、Marek Pijarowski。ショパン研究所より2枚のアルバムをリリース。
● Piotr Alexewicz 1次予選 プログラム
- 練習曲 ロ短調 Op.25-10
- 幻想曲 ヘ短調 Op.49
- ワルツ 変イ長調 Op.42
- 夜想曲 ホ長調 Op.62-2
● Piotr Alexewicz 2次予選 プログラム
- ポロネーズ 変イ長調 Op.53
- 前奏曲 ハ長調 Op.28-1
- 前奏曲 イ短調 Op.28-2
- 前奏曲 ト長調 Op.28-3
- 前奏曲 ホ短調 Op.28-4
- 前奏曲 ニ長調 Op.28-5
- 前奏曲 ロ短調 Op.28-6
- 前奏曲 イ長調 Op.28-7
- 前奏曲 嬰ヘ短調 Op.28-8
- 前奏曲 ホ長調 Op.28-9
- 前奏曲 嬰ハ短調 Op.28-10
- 前奏曲 ロ長調 Op.28-11
- 前奏曲 嬰ト短調 Op.28-12
- 前奏曲 嬰ヘ長調 Op.28-13
- 前奏曲 変ホ短調 Op.28-14
- 前奏曲 変ニ長調 Op.28-15
- 前奏曲 変ロ短調 Op.28-16
- 前奏曲 変イ長調 Op.28-17
- 前奏曲 ヘ短調 Op.28-18
- 前奏曲 変ホ長調 Op.28-19
- 前奏曲 ハ短調 Op.28-20
- 前奏曲 変ロ長調 Op.28-21
- 前奏曲 ト短調 Op.28-22
- 前奏曲 ヘ長調 Op.28-23
- 前奏曲 ニ短調 Op.28-24
● Piotr Alexewicz 3次予選 プログラム
- ピアノソナタ第2番 変ロ短調 Op.35
- マズルカ ホ短調 Op.41-1
- マズルカ ロ長調 Op.41-2
- マズルカ 変イ長調 Op.41-3
- マズルカ 嬰ハ短調 Op.41-4
- 前奏曲 嬰ハ短調 Op.45
- アンダンテ・スピアナートと華麗なる大ポロネーズ 変ホ長調 Op.22
● Piotr Alexewicz ファイナル プログラム
- 幻想ポロネーズ 変イ長調 Op.61
- ピアノ協奏曲 第2番 ヘ短調 Op.21
Piotr Alexewicz(ポーランド)演奏レポート
ファイナル進出予想: ★★★
ポーランド人ファイナリスト筆頭候補として注目を集めるアレクセーヴィチ。
《プレリュード 嬰ハ短調 Op.45》から《ソナタ第2番》への流れは自然で美しく、端正なピアニズムが際立った。マズルカOp.41では繊細なニュアンスの変化を織り交ぜ、詩的でありながらも芯の強い響きを聴かせる。《アンダンテ・スピアナートと華麗なるポロネーズ》では、端麗なフレージングと安定したリズム感が光り、ホールに心地よい余韻を残した。派手な表現よりも、誠実な構築で聴く人を納得させる演奏だった。
🕔 ケヴィン・チェン(20)カナダ🇨🇦
🎹 使用ピアノ:スタインウェイ
● Kevin Chen プロフィール
- 生年月日:2005年3月7日生まれ
- 師事歴:Colleen Athparia、Krzysztof Jabłoński(今大会の審査員)、Marilyn Engle、Arie Vardi(現在)
- 所属:ハノーファー音楽・演劇・メディア大学(ドイツ)
- 受賞歴:アルトゥール・ルービンシュタイン国際ピアノコンクール(テルアビブ)第1位(2023)、ジュネーヴ国際音楽コンクール第1位(2022)
- 過去受けたマスタークラス等で受けた師事した教授陣:
- その他:カーネギーホール、ロンドン・セントジョンズ・スミス・スクエアなどで演奏。ラ・ロック・ダンテロン、ドゥシュニキ=ズドゥルイ、「ショパンと彼のヨーロッパ」音楽祭、オックスフォード・ピアノ・フェスティバルなどに出演。アボッツフォード青少年管弦楽団との共演を皮切りに、エドモントン響、台北響、カルガリー・フィル、ワルシャワ・フィル、スイス・ロマンド管、ハンガリー国立管などと共演。
● Kevin Chen 1次予選 プログラム
- 夜想曲 ハ短調 Op.48-1
- ワルツ 変ホ長調 Op.18
- 練習曲 嬰ト短調 Op.25-6
- 幻想曲 ヘ短調 Op.49
● Kevin Chen 2次予選 プログラム
- 前奏曲 イ長調 Op.28-7
- 前奏曲 嬰ヘ短調 Op.28-8
- 前奏曲 ホ長調 Op.28-9
- 前奏曲 嬰ハ短調 Op.28-10
- 前奏曲 ロ長調 Op.28-11
- 前奏曲 嬰ト短調 Op.28-12
- ポロネーズ 変イ長調 Op.53
- 練習曲 ハ長調 Op.10-1
- 練習曲 イ短調 Op.10-2
- 練習曲 ホ長調 Op.10-3
- 練習曲 嬰ハ短調 Op.10-4
- 練習曲 変ト長調 Op.10-5
- 練習曲 変ホ短調 Op.10-6
- 練習曲 ハ長調 Op.10-7
- 練習曲 ヘ長調 Op.10-8
- 練習曲 ヘ短調 Op.10-9
- 練習曲 変イ長調 Op.10-10
- 練習曲 変ホ長調 Op.10-11
- 練習曲 ハ短調 Op.10-12
● Kevin Chen 3次予選 プログラム
- マズルカ ホ短調 Op.41-1
- マズルカ ロ長調 Op.41-2
- マズルカ 変イ長調 Op.41-3
- マズルカ 嬰ハ短調 Op.41-4
- バラード第4番 ヘ短調 Op.52
- ピアノソナタ第3番 ロ短調 Op.58
● Kevin Chen ファイナル プログラム
- 幻想ポロネーズ 変イ長調 Op.61
- ピアノ協奏曲 第1番 ホ短調 Op.11
Kevin Chen(カナダ)演奏レポート
ファイナル進出予想: ★★★★★
この日、そしておそらく今大会でも最も完璧に近いステージを作り上げたのがケヴィン・チェンだった。マズルカOp.41では流麗なルバートと自然な呼吸が共存し、音の一つ一つが歌っていた。《バラード第4番》では壮大な構成と精緻なディテールの融合が鳥肌ものの高揚を生み出し、続く《ソナタ ロ短調》は圧倒的な完成度で会場を包み込んだ。評論家たちも一様に「競技を支配する存在」「理性と感性の完璧な均衡」と評し、演奏後には万雷の拍手が鳴り止まなかった。
🕔 エリック・ルー(27)アメリカ合衆国🇺🇸
🎹 使用ピアノ:Fazioli
● Eric Lu プロフィール
- 生年月日:1997年12月15日生まれ
- 師事歴:
- 所属:Curtis Institute(アメリカ)
- 受賞歴:リーズ国際ピアノコンクール(2018)第1位
- 過去受けたマスタークラス等で受けた師事した教授陣:
- その他:ボストン響、ロンドン響、シカゴ響、東京交響楽団、フィンランド放響、上海響、ロサンゼルス・フィル、オスロ・フィル、ルクセンブルク・フィル、ストックホルム・フィル、ワルシャワ国立フィルなどと共演。ケルン・フィルハーモニー、クイーン・エリザベス・ホール、エルプフィル、コンセルトヘボウ、ウィグモア・ホール、デイヴィス・シンフォニーホール、ワルシャワ・フィルハーモニー、ソウル芸術の殿堂、ボザール(ブリュッセル)等でリサイタル。Warner Classicsよりシューベルト/ショパン/シューマン/ブラームス作品のアルバムをリリース。
● Eric Lu 1次予選 プログラム
- 夜想曲 嬰ハ短調 Op.27-1
- ワルツ 変イ長調 Op.42
- 練習曲 ロ短調 Op.25-10
- バラード第4番 ヘ短調 Op.52
● Eric Lu 2次予選 プログラム
- ポロネーズ 嬰ヘ短調 Op.44
- 前奏曲第7番 イ長調 Op.28-7
- 前奏曲第8番 嬰ヘ短調 Op.28-8
- 前奏曲第9番 ホ長調 Op.28-9
- 前奏曲第10番 嬰ハ短調 Op.28-10
- 前奏曲第11番 ロ長調 Op.28-11
- 前奏曲第12番 嬰ト短調 Op.28-12
- ワルツ 嬰ハ短調 Op.64-2
- ピアノソナタ第2番 変ロ短調 Op.35
● Eric Lu 3次予選 プログラム
- 舟歌 嬰ヘ長調 Op.60
- ポロネーズ 変ロ長調 Op.71-2(WN 17)
- マズルカ 第1番 ロ長調 Op.56-1
- マズルカ 第2番 ハ長調 Op.56-2
- マズルカ 第3番 ハ短調 Op.56-3
- ピアノソナタ第3番 ロ短調 Op.58
● Eric Lu ファイナル プログラム
- 幻想ポロネーズ 変イ長調 Op.61
- ピアノ協奏曲第2番 ヘ短調 Op.21
Eric Lu(アメリカ)演奏レポート
ファイナル進出予想: ★★★★★
第3次予選の締めくくりは、エリック・ルー。健康上の理由で演奏が延期されていたが、満を持して登場したこの日のステージはまさに「詩と散文の融合」。《舟歌》では柔らかく光を帯びた音が流れ、深い詩情を漂わせた。一方、《ポロネーズ 変ロ長調》では強い意志の刻みが印象的で、堂々とした構築を聴かせた。マズルカでは落ち着きと品格が際立ち、ソナタでは内面的な深さを湛えながらも、音楽が呼吸する瞬間を大切にしていた。その表現は成熟と洗練の両立であり、聴衆にとって一日の締めくくりにふさわしい静謐な余韻を残した。
総括
第3次予選最終日は、静けさと情熱、構築と自由、そして理性と詩の狭間で音楽が息づく一日となった。それぞれのピアニストが持つ色彩が際立ち、誰もが独自のショパン像を描いた。
評論家の言葉を借りるなら――「理性はケヴィン・チェンを支持し、心は王子桐を求める」。その言葉の通り、完璧さと感情のバランスをどう取るかが、この先のファイナルを占う鍵となるだろう。ファイナル進出予想最有力はKevin Chen(カナダ), Zitong Wang(中国)、有力がEric Lu(アメリカ), Piotr Alexewicz(ポーランド)でしょうか。
第19回ショパン国際ピアノコンクール第3次予選が、10月14日ワルシャワ・フィルハーモニーで幕を開けた。ソナタとマズルカという最も本質的な課題曲を前に、20名のセミファイナリストたちがそれぞれの音楽観と個性を響かせた一日。初日から印象的な演[…]
第19回ショパン国際ピアノコンクール第3次予選2日目となった10月15日、朝のワルシャワ・フィルハーモニーには、再びショパンの音楽が息づいた。前日とは異なり、この日は東アジア勢とポーランド勢が中心。繊細な抒情、若い感性、そして構築的な知性が[…]