🎹 第19回ショパン国際ピアノコンクール2025 審査方式の変更点まとめ
2025年10月に開催される第19回ショパン国際ピアノコンクールでは、これまでの方式からいくつか重要な変更が加えられました。今回は、公式文書「Rules of the Competition Jury(審査員規程)」最新版(2025年10月2日付)に基づき、主に 採点方式・演奏順の新ルール・“Student(弟子)”の定義・ラウンドごとの重み付け について詳しく解説します。
🎼 採点方式:より精密で公平な評価へ
各審査員は、出場者1人につき 1〜25点 の整数で評価します。これまでも同様の25点制でしたが、今大会からは「極端な点数」を自動補正する仕組みが導入されました。
- 第1次予選では、平均点から±3点以上離れた採点があった場合、境界値に補正されます。
- 第2次・第3次およびファイナルでは、平均点から±2点以上の乖離がある場合に補正。
つまり、他の審査員とかけ離れた極端な高得点・低得点は自動的に調整され、個人の主観による偏りを防ぐ仕組みです。
また、自分の「弟子(Student)」に該当する出場者については採点せず、スコアシートに “S” と記入します。その分は平均点計算から除外されます。
🧮 採点結果の計算と累積方式(ラウンド別重み付け)
各ラウンドの結果は単独の点数としてだけでなく、次のラウンドへの進出や最終順位において、以下のような重み付け(weighting)が適用されます。
目的 | 各ラウンドの比率 |
---|---|
第2次進出判定 | 第1次 30% / 第2次 70% |
ファイナル進出判定 | 第1次 10% / 第2次 20% / 第3次 70% |
最終順位決定 | 第1次 10% / 第2次 20% / 第3次 35% / ファイナル 35% |
これにより、後半のステージ(特に第3次・ファイナル)の比重が大きく設定されています。初期の出来も無視されない一方で、後半の充実度がより重要視される構造です。
🔠 演奏順の新ルール:6文字ずつシフト制
これまでと異なり、今大会では各ラウンドの開始順が6文字ずつアルファベットをずらす方式に統一されました。
- 第1次予選:抽選で決まった1文字から開始
- 第2次予選:その6文字後のアルファベットから開始
- 第3次予選:さらに6文字後
- ファイナル:さらに6文字後
例:もし第1次予選が「G」から始まる場合、
第2次=「M」→ 第3次=「S」→ ファイナル=「Y」となります。
この方式は、各ラウンドで出場順の偏り(たとえば「朝ばかり」「夜ばかり」になる)を防ぎ、より公平な演奏条件を確保するための新制度です。
👩🏫 「Student(弟子)」の定義:関係の明確化
審査員が過去に指導した出場者への評価を避けるため、「Student(弟子)」の定義も厳格化されました。
- 現在、審査員のもとで正式に学んでいる学生
- 2021年の前回大会以降、半年以上の期間、定期的に学んでいた元学生
- 審査の公正性に影響を与えるほどの個人的関係がある場合
一方で、マスタークラスやオンラインレッスンなどの短期的な関わりは「Student」には含まれません。
自分の弟子に該当する参加者を採点した場合はルール違反と見なされ、解任の対象となります。
🧭 総評:より透明で国際的な基準へ
今回の改定は、これまで議論のあった「採点のばらつき」や「弟子関係の不透明さ」を是正し、より客観的で国際的に信頼される評価体制を目指す内容となっています。
審査員ごとの独断を防ぐ調整システムや、ラウンドごとの重み付け構造など、制度面での透明性が大きく強化されました。
ファイナルへ向けて、技術と音楽性の両立に加え、「各段階での安定した完成度」がこれまで以上に重要となりそうです。